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矯正治療実況中継 最終回

2015年1月27日

正面の様子

2010年3月から開始したT.M.さんの動的治療が終了しました。治療期間は4年8か月でした。

途中、顎位が変化し上の大臼歯の遠心移動を行いリカバリーしました。そのため、通常の2倍の治療期間がかかりました。

側面の様子
側面の様子

それに加えて、従業員のため、一般の患者さんの治療を優先することになり、治療間隔が通常よりも長くなってしまったことが治療期間の延長につながりました。T.M.さんごめんなさい。

咬頭嵌合(こうとうかんごう)

非抜歯の側貌

治療前の側貌

結果はしっかり1級の咬頭嵌合(上下の第一大臼歯の位置関係が正しく、上下の歯がきちんと咬み合っている状態)ができました。
下顎前歯が上顎前歯に比べ大きいため、ややオーバーバイト(上の前歯と下の前歯の垂直方向での重なり・オーバージェット(水平方向での重なり)は少なめです(通常は、どちらも2~3mm)。

ブラックトライアングル

治療の最終盤で上下の隣接面をスライスしてブラックトライアングルをなくしました。

ブラックトライアングルとは、歯と歯の間の歯肉が退縮し、根元の方に黒い三角形の隙間ができることです。
矯正治療をおこなうと、でこぼこに重なっていた歯がきれいに並んだことで歯と歯の間隔が広がり、隙間(ブラックトライアングル)が目立つようになることがあります。ブラックトライアングルは、場合によっては治療により軽減することができます。

当院の矯正治療でブラックトライアングルの改善をおこなった治療例をご覧ください。
こちらの方は、歯と歯の間を少しスライスしてから歯を寄せて解消しました。

正面の様子

TMさんも、歯をスライスして寄せることで、ブラックトライアングルをなくしました。鼓形空隙が歯肉で満たされているでしょう。

下顎にはブラックトライアングルが残っていますが、下顎のブラックトライアングルは消し切ることは通常難しいです。

顔貌の変化

正面の様子

術前の側貌と比較すると、上下の口唇が後退し口元がすっきりしています。
口唇が緊張することなく口唇閉鎖が可能になっています。

歯根の平行性(パラレリング)

レントゲン

歯根の平行性は十分にとられています。

歯根の平行性

左右とも大臼歯は十分にアップライト(整直)しています。

口唇閉鎖

口唇閉鎖

下顎前歯からオトガイに至る硬組織のラインとそれを被う軟組織のラインがほぼ平行です。これは緊張なく口唇閉鎖ができている証です。右側の側貌写真をご覧いただければわかるように、唇の下にシワが寄ることなく自然に口が閉じられています。

大臼歯の移動

大臼歯の移動

大臼歯の移動

ヘッドギアは使用しませんでしたが、上顎大臼歯の近心移動は最小限にとどめられました。
下顎大臼歯は2 級ゴムを用いて積極的に近心に移動しました。上下顎の前歯が後退し口唇がリラックスして閉鎖できるようになり、側貌が改善しています。

2 級ゴムの期間は長期間でしたが、下顎は回転しませんでした。十分臼歯をアップライトしワイヤーによるコントロールを十分に行ったことと、患者さんの咬むと言う機能が充実していたため、大臼歯は挺出せず、結果として下顎は回転しませんでした。

矯正治療を終えて

非抜歯の側貌

治療前の側貌

左側は、治療開始前にセットアップモデルを元にして作った治療のゴールの予測で、第1回目に「治療後の口元は、こんな感じになる予定です。」として掲載した写真です。
右側は、実際に治療をおこなってできた口元の写真です。ほとんど予測通りに仕上がっています。

冒頭で述べたように、途中で顎位が変化したことと、治療間隔が長くなったことから、通常の2倍の治療期間がかかりましたが、患者さんがしっかりとゴムを使ってくれ、顎位変化時の治療方針の見直し・治療期間延長についても理解を得られたことから、適切に治療を継続することができ、予定通りの結果を得られました。

患者さんは痛みが強かったようで不安なこともあったでしょうが、本当によく頑張ったと思います。
治療結果に満足してくれているでしょうか?
後戻りしないように、これからは保定を頑張ってください。

症例情報
【主訴】歯並びのデコボコを治したい
【診断名】中立咬合、叢生
【年齢】26歳
【治療に用いた主な装置】マルチブラケット装置
【抜歯部位】上顎下顎第1小臼歯
【治療期間】4年8か月 また、治療期間と同程度の保定期間を要する
※当院の従業員の治療のため、一般の患者さんの治療を優先し、通常より治療期間が長くなっています。
【通院回数】治療期間は50回(月に1回程度)の通院、保定期間は14回(4か月に1回程度)の通院
【治療費概算(自費)】約90万円 ※別途、初診相談料5,500円(税込)、検査診断料55,000円(税込)
【リスク 副作用】
初めて装置を装着した時やワイヤー調整後は、噛むと痛みを感じたり、違和感を持つ場合があります。
矯正治療中は歯磨きしにくい部分ができるため、むし歯や歯周病になるリスクが高くなります。
歯を動かす際に、歯根吸収や歯肉退縮が起こる場合があります。
歯並びを整え、咬み合わせを改善するため、やむを得ず健康な歯を抜くことがあります。
リテーナー(保定装置)を使わずに放っておくと、治療前の状態に後戻りすることがあります。

※ 矯正歯科治療は公的健康保険の対象外の自由(自費)診療となります。

※ 治療費用は改定していますので、現在の費用は料金ページをご覧ください。

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