前回は矯正治療に必要な検査についてコンセンサスが得られている部分についてお話をしました.セファロがなければ矯正治療ができないわけではありませんが,治療が難しい患者さんで予測と違う好ましくない変化が起こった時に,「なぜそれが生じたか?」がわかるための資料です.術前のセファロがなければ比較できませんから原因を特定することはできません.セファロのように無くてはならない検査がある一方で,当院で行っているカリエスリスクなどのように役には立つが無くても良いという検査もあります.
最近では矯正歯科医院でもCT(conputed tomography)を導入する医院があります.埋伏歯(骨の中に埋まったままの歯)や顎変型症(顎の曲がった患者さんや下あごが過度に大きい患者さん)の外科的矯正治療(手術です)の際にはあると,とても有用です.私も導入したいところですがそのコストを患者さんにご負担いただくわけにはいかないので,必要な場合は町田市民病院や東海大学病院にお願いしています.
呼吸の状態を検査する矯正歯科医院もあるように聞いたことがあります.口呼吸は歯並びはもとより口腔周囲の機能に悪い影響を及ぼします.矯正歯科医院で口呼吸を指導してやめさせる場合にはモチベーションをあげるためにそのような検査は有用なのでしょうね.そして将来的にそん検査を行うことで矯正治療の質が向上するとなどという,よい結果が信頼の置ける形の論文で示されればみんなが行う検査になるのでしょう.今のところはそうではないようです.
基本的には検査は患者さんに有益でなくてはいけません.その検査を受けたときのデメリット(害)とメリット(利益)を比較しメリットが多くなくてはいけません.デメリットは時間がかかるのもそうでしょうし,採血などの体に傷をつけるてしまう検査もあります.お金がかかるのデメリットですね.メリットは検査を行うと治療法の選択が容易になり,治療の安全性が増す,治療の質が高まる.治療期間が短縮できる.などでしょうか.前回お話した検査はおおむねメリットが多いとコンセンサスが得られている検査です.