元旦のプログの続きです。できれば元旦にここまで書いてしまいたかったのですが、時間切れで果たせませんでした。と思っているともう1月4日。光陰矢のごとし。私事で恐縮ですが、このお正月は私の愚息にとっては良いお正月であったと思います。
さて、遡ること数日、大晦日の朝日新聞のトップニュースは「専門医師認定54人不正ー01年以降臨床歴など偽る」というタイトルでした。1年の最後のトップニュースに持ってくるのですから朝日新聞に何らかの意図があるはずです。
専門医制度をめぐる不正についての報道は12月6日に各紙が「昭和大の医師5人が内科認定医試験で診療経験を偽った」と報道がありました。毎日新聞が一番詳しかったように思います。その後12月8日の読売新聞に「東京医科歯科大学でも内科認定医不正6人」と報道されました。
31日は他紙は1面ではこの件について報道していませんので、お役所が意図を持って情報をリークして書かせたわけではなさそうです。情報源が日本専門医認定制機構である事から認定制機構がこのような記事を書いてくれることを望んだか。朝日新聞がうちも医療問題には取り組んでいます。のアピールのために書いたというところではないでしょうか。
泌尿器科学会、麻酔科学会、病理学会、アレルギー学会、消化器外科学会、内科学会、小児科学会で不正があったと報道されています。
逆に言うとこの時期に不正を認定制機構が把握している学会というのは風通しがよく、真剣に患者さんのための専門医制度を作ろうとしている会かもしれません。
個人的な意見ですが、認定制度に限らず制度に不正はつきものです。
その不正をどのように阻止するか、不正があった場合に再発しないためにどのような事を行うか?このことが「情報の透明性」を確保した上でなされるのでなければそもそも認定制度などやるべきではないのです。
翻って、歯科矯正の世界ではどうでしょうか?
日本矯正学会が以前より認定医制度を行ってまいりました。その認定医制度は2001年までは認定基準が書類選考だけという代物で認定医の質を担保する仕組みが十分でないものでした。不正に関しては身内で不正を行ったものがいるのは知っています。その他の不正も見聞きしたことがあります。さらには、学会が実際に不正の調査を行ったいう事実も聞いたことがあります。しかしながらその結果は、何一つ表には出てきません。これからいえることは、日本矯正学会の認定医制度とは患者さんのためのものではなく、学会に所属する歯科医師のためのものであるということです。
このような状況を改善するために事ある毎に学会内部から改革を訴え続けてきましたが、これまでの認定医制度についての反省もないまま、学会はその上に二階建て構造の専門医制度を作るに到りました。認定医をとってから専門医をとるということですね。多くの問題点や不正が指摘されているにも関わらず改革しないまま認定医制度を続けてきた学会に患者さんのためになる専門医制度を運営できるわけがない。と私は思います。
かといって、飲み屋のカウンターで「専門医制度だめだよね。」とくだを巻いていても発展性がないので、自分にできることは何かと考え、日本矯正協会の活動に協力するようになりました。
日本矯正協会とは矯正歯科臨床医が集まり臨床の質を評価できる専門医制度の確立目指した団体です。どちらが影でどちらが光かはわかりませんが、日本矯正歯科学会がいい加減な認定制度をつづけていなければ、日本矯正歯科協会は存在していないのですからコインの裏表みたいなものかもしれません。2つの団体が存在し、干渉しあうことでしか患者さんのためになる専門医制度は作り得ないのかもしれません。現在は厚生労働省の指導の下に日本矯正協会、日本矯正歯科学会、日本成人矯正学会の3団体でより良い専門医制度を作るための話し合い中です。(その中でも日本矯正学会は自分たちの保身ばかり考え患者さんの方は向いていない)ここで厚生労働省が出てきましたので、厚労省と専門医制度の関係を説明しておきます。
大晦日の新聞記事の最後の部分を一部引用します。
引用ここから「専門医は02年から電話帳や新聞などでの広告表示が可能になった。所轄する厚生労働省医政局は『不正が極めて悪質で学会が何の対策もとっていない場合、広告表示を認めない事もあり得る』としている」引用終わり。
厚労省のコメントは専門医制度がさも医療の質を担保している様にも読めますがその実情は学会が法人格をもち、5年以上の活動歴と1000人以上の会員数をもち認定制度を施行していれば認定制度の中身に関係なく広告が許されます。つまり外形基準のみで審査が行われ医療の質については厚労省は担保していません。その部分は各学会に丸投げです。もしくは前述の認定制機構に力があればそこで担保される可能性はあります。現在の広告ができる専門医制度について前述のように質が担保されていないではないかという批判に対して厚労省は現在の制度はその医師の専門の方向性を患者さんに教えているだけで質は担保していないと宣いました。さてそんな専門医制度を患者さんが望んでいるのでしょうか。
ということで、みんな自分のことや自分の組織を守ることにきゅうきゅうとして「患者さんのため」という視点が抜け落ちています。
日本矯正協会は現在日本矯正歯科学会と対等な立場で話し合いのテーブルについていますが、最初から相対して交渉を行うためにできた団体ではありません。最初は「臨床矯正を語る会」という臨床医の集まり専門医制度を考える会でありました。その集まりの中で学会寄りの人もいれば、問題を問題として認識していない人もいる。今行動しなければ日本における矯正歯科治療というものは質の悪いものの代名詞となってしまうと危惧する者もいました。ほとんどの人は自己保身のために行動していたのだと思います。そのなかで患者さんのためになる専門医制度とは?と日々自問自答し続けた人たちが日本矯正歯科協会を創ったのだと理解しています。私は大学に在職していましたので、臨床矯正を語る会には参加していません。日本矯正歯科協会設立頃より参加しました。このような流れを考えても、どちらか一方がもう一方を吸収する形ではなく、お互いに影響しあう関係でないと質の担保はできないのでは?との思いを強くしました。
茂木さんも言っているように「未来は予測するものではなく自分で創るものである」
専門医制度も学会がとか厚労省がとか言い訳ばかりではなくより良くするために自らができることは何かをよく考えて「自分たちで創っていく」つもりでがんばっている多くの仲間の先生とまた1年間活動できることを幸せに思います。
綺麗なまとめすぎますね。