先週の木曜日いつものお花屋さんに行ったらお休みでした。それで淵野辺駅に行くついでに南口から公園にいく途中の八百屋さんの軒先で営業している花屋さん(すいません、名前知りません)で玄関に飾る花を買い求めた。横に広がる腕のように張り出す緑があるアレンジで「お!ちょっと違うぜ」と思っていた。そしたら2−3日すると黄色の花は咲くわ、ケイトウみたいのは伸びて赤く色づくわ、日々表情がかわり毎日見ていて飽きません。切り花でも生きているんだということを改めて思いました。
さて、矯正歯科にいらっしゃる患者さんも勿論生きています。そして皆さんそれぞれ個性をお持ちです。その個性の一つが歯並びあったりするわけです。ちょっとした歯の生え方の不具合で機能的に問題が出てしまう場合は勿論治療が必要です。ただ、ちょっとした歯のでこぼこだったり、ちょっとした出っ歯だったり、これはその人の個性ともいえるわけで、どーしても治さなくてはいけない部類のものではないかもしれません(反対咬合は機能的に問題が生じやすいのでなおした方が良いと思います)。ただ、綺麗な歯並びの方が生きやすい(メリットがある)社会もあるので治そうと思うひともいるでしょうし、本人が綺麗な歯並びになりたいと切望する場合もあります。このような場合は治療の対象となると思います。
さて治療に際してさしあたって装置をつければ歯は動きます。装置をつけなくたって歯にある程度持続的な力を掛ければ歯は動きます。患者さんが気にされているでこぼこはすぐに治ってしまいます。では、その段階で治療を終わりにしてもいいのでしょうか?答えは否です。上下の噛み合わせがきちんとしていないとすぐにでこぼこは戻ってしまいます。矯正治療は悪くなった所を修復する治療ではありません。全く新しい噛み合わせを作り上げる治療です。ですから作り上げる噛み合わせは理想的な状態である必要があります。顎の関節と調和のとれた位置に作り上げられた上下の噛み合わせが機能しきちんと噛むことで並べた歯がそこにいることができるのです。それでも人間は生きていますから5年10年の単位では多少の後戻りは生じます。気になる場合は再治療で対応することにしています。
矯正の治療法には流行り廃りがあるそうです。私は矯正の勉強を始めてから一貫したコンセプトの下で治療を行っていますので診断基準が大きく変わったりはしていません。ただ、最近は抜かない治療が流行っているようです。たいていは流行りはアメリカから新しい装置とともにやって来ます。抜かない矯正の流行りもそういった要因があると思います。私もできたら歯はぬきたくありません。でもより綺麗な顔貌にしようとするとやはり歯を抜いて前歯の位置をきちんと良い位置にしてあげないといけない症例が確実に存在します。拡大の効果にしても上の顎はある程度拡大できることが文献的に明らかにされていますが、下の顎についてはそのベースが広がるといった文献はありませんし、拡大した歯列が維持されるといった結果の信頼できる文献を私はみたことがありません。(私が不勉強なだけかも知れませんが)
どんなに技術が新しくなっても人間は変わりません。ガンダムに出てくるニュータイプでもそんなに体の構造は違わないでしょう。人間が変わらないのに診断を変えるというのは結果が変わるということを意味します。徐々に変化が起きているため分かりづらいですが、前歯が前方に突出し、より唇が閉じにくい状態、美しくない口元になっているかもしれません。