昨日の夜は乳幼児歯科検診事業協力医・担当者会議であった。相模原市の3.5歳児の一人平均齲歯数は0.9本で1本を切ったそうです。平成12年は1.4本だったそうです。1.4本も、さして多い数字ではありませんがさらに減って0.9本、行政、歯科医師会、歯科衛生士会とお母さんお父さんの努力に敬服いたします。
さて、会議の最後で担当理事が
「今、乳幼児歯科検診に求められるもの
〜子育て支援と食育推進の流れの中で」
昭和大学歯学部 小児成育歯科学教室 井上美津子という講演をしてくださいました。
最初は教授講演するのかと期待していたのですが、「スライドを借りてきましたので」
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肩すかしですね。
さて私はその講演のながれがどうも理解できませんでした。
講演の冒頭は最近の子育て事情が紹介されていました。
少子化、核家族化、都市化、生活様式の変化、情報の発達
昨今の核家族化で今の親たちは自分の子供が生涯で初めて接する赤ちゃんだったりする。
住環境の変化で子供達は外遊びの減少、友達あそびの減少、テレビビデオの増加がある。
氾濫する育児情報のなかで育児不安になる母親、具体的に相談できる人が身近にいない。
など、割と現在の育児環境を以前と比べて良くないものとして表現していました。
そのつぎに、小児期のう蝕が減少した。事を踏まえて、
これからの健診は
従来の一般的な知識の伝達、歯科のみに視点をあわせた保健指導から
個別に状況に合わせた情報の伝達、親子の生活状況を踏まえた相談・指導
に移るべきだと述べている。
ちょっと待て。
今の育児環境は本当にわるいのか?
う蝕が減ったことは今の育児環境とは関係ないのか?
何か本質とは全く違うところで論を展開している気がする。
まずこのスライド作成者はう蝕の減少を良いことととらえていないのではないかとすら思えてしまう。小児のう蝕を減らすべく健診事業を継続して行っているわけであるからう蝕の減少を言祝ぎこそすれ、悲観する必要は全くないと思うのであるがいかがであろうか。
「う蝕の減少は乳幼児期から学童期にまで及んできている。」この助詞「まで」はどのようなニュアンスで用いられているのであろうか。
またスライド作成者は現在の育児環境がだめだと決めつけているが、
その環境の中でう蝕歯が減少したのではないのか?
少子化して一人の子供にかける労力が大きくなったからう蝕が減ったとは考えられないか?
核家族化したことで甘やかす祖父母から遠ざけられ、だらだら食べ等がなくなったのではないのか?
歯のケアに対する様々な情報が親に届いているからこそ、親がより良いケアを行い、結果としてう蝕が減ったとは考えられないか?
いまの育児環境が理想的ではないがすべてを否定する必要もないと思う。
さらにはう蝕が減少したのであればそれを言祝ぎ、減少したまま維持するための方策を考えればよいと思う。個別の状況のあわせた対応は本来歯科医院で行うもので、健診では
「個別の状況に配慮できたらいいな」
くらいではないのか?これ以上う蝕を減らさなくていいのであれば、必要最小限のエネルギー(お金をかけずに)で今のレベルを維持するためのシステムを作ることを考えるべきではないか?なぜ、過大な負担を背負う事を望むのであろうか。
健診のシステムを変えるのであれば、今まで行ってきたことの何が良くて何がいけなかったのか?
今の育児環境の何が良くて何が悪いのか?(もちろんう蝕にとってである。)
今までの健診システムの何を残して何を変えるべきか?
をきちんと考えることではないか。
過去の反省は必要である。