火曜日は資源ゴミの日、段ボール、瓶、缶、雑誌を捨てる日です。古くなった雑誌を捨てましょう。とその時、プレジデントファミリー11月号の表紙をちらっと読んでしまいました。
「子供の歯、目、皮膚にいい習慣」
見てしまった!こうなると本を開かざる終えない。朝の掃除の途中なのに・・・・
なになに「虫歯、歯周病の新常識」だと?
「ゴシゴシ磨きは意味なし」
医科歯科の川口教授が言っているらしい。そうでしょうとも。歯垢が落ちないとだめですね。同意します。
「歯磨きは1日1回でいい」
これも川口先生ですね。いい加減な歯磨きを1日3回するよりも1日1回徹底的に歯垢を取り除く習慣をつけた方がよい。それも寝る前にと書いてありました。全く同意です。常日頃患者さんに言っております。
「歯ブラシだけで落ちる歯垢は60%」
そうですね。フロスを使わないとそんなものでしょう。同意です。
「歯ブラシは毛先が開かなくても交換」
弾力性がなくなるので2カ月で交換してくださいだそうです。ちょっと?
「歯磨き後はちゃんとゆすがない」
フッ素入り歯磨きを使用しているときはその方が効果的です。同意します。
「歯科ドックでオーダーメイドのむし歯予防」
昭和大学教授の久光先生が言っている。
唾液検査をしましょうと言うことらしい。うーん難しい。唾液検査をしてカリエス予防の効果がしないより上がったと言うエビデンスは見たことがない。とおもう自信はないが。でも、患者さんのモチベーションを上げるのに良いツールではある。
「いびきは歯医者に相談できる」
昭和大学教授の井上先生が言っている。「歯科ドックはオプションも豊富だ。歯軋りやいびきの相談、歯のホワイトニングといった口腔に関する様々な悩みを相談できる」
確かに相談はできますね。でも、歯科医師がいびきを治せるんでしょうか?痩せなさいとしどうするんでしょうか?私立大学は経営も考えなくてはならないので大変ですね。
「虫歯ができてから歯科に行くのは日本だけ!?」
定期健診をしましょうということ、そうすると抜ける歯が少なくなるという報告があります。研究のデザインが良くないのでエビデンスとしては弱いですが。同意しますし定期健診は積極的に勧めます。
「軽い虫歯は自宅で治す」
初期虫歯はフッ素入りの歯磨材で毎日しっかり磨けば改善します。特にMIペーストを使わなくてもね。でも、歯医者さんに診てもらったからの方が賢明です。
「ほおづえをつくと歯並びが悪くなる」
昭和大学矯正の槇教授が言っています。「槇先生が以前診たある姉妹は姉が右、妹が左に極端にあごがずれていたそう。二人は子供部屋で机をならべていて、本を読んだり勉強するときにはお互いを邪魔しあわないようにそっぽを向いていた。つまり、姉は左手で、妹は右手で頬杖をついていたというわけだ」
ふむふむ、物語としてはおもしろいです。でもね、その姉妹は1日のうち何時間をその机に座って過ごしたのだろうか?そのうちの何時間、頬杖をついたのか?姉は右利きで妹は左利き?(だってそうでないと書きながらほおづえできないし)実際双子で反対方向に顔が曲がっている子供はいる。僕も3組くらい診た。胎児の時の向き合い方にその理由を見いだすこともできる。上記のことは仮説の一つであり、証明されたエビデンスのある説ではない。大学の教授たるものただの仮説をこのような雑誌に掲載すべきではないと思うが皆さんはどのように思うであろうか。100歩譲ってほおづえで顎が曲がるとしよう。つまり、外力で顎を変形できると言うことである。であれば、顎が曲がっている人に反対から力を加えれば治るはずである。しかし、過去の報告でその様な症例にお目にかかったことはない。北九州の先生が顎の偏位が治ったと症例呈示している野球部の少年は顎をずらして咬んでいるだけであった。もしくは咬合位でない写真が治療後の写真として示されていました。それは第十八回与五沢矯正研究会で症例をみて確認しました。よってこのお題目は不同意。
「昼間によく咬んで歯軋り予防」
再度、槇先生のご登場です。「歯軋りの一因に、しっかり噛んで食べていないと言うことがあるという。歯根を覆う歯根膜には圧力を感じるセンサーがあり、噛んだときの刺激を脳に伝える。日中によく噛まないと、夜中につじつまを合わせようと圧力を加える。つまりこれが歯軋り」
え!そうだったんですか?日中によく噛まないとつじつまを合わせようと歯軋りするんですか?そんなエビデンスができたんですね!いや不勉強を恥じますね。でも、ホント?こんなエビデンスができのなら、もっと歯科界で話題になると思うのですが・・・・
歯軋りで歯周組織がダメージを受けるのはほんとうです。ですが、歯軋りは多因子性(原因がよくわからない、もとい、原因が一つでない)なのでコントロールができない。やめさせることができないので、歯軋りで歯周組織を壊さないようにナイトガードをいれて、歯軋りのエネルギーでナイトガードを壊してもらい歯周組織を温存する。ということしかできないのが現状だと思っていました。いや、昼間噛めば歯軋りが止まる。いや、朗報ですね。ほんとなら!ホントかどうかパブメドで検索だ!いや、手っ取り早く人に聞こう。
ということでこのお題目は全く不同意。
「飲食の頻度は少ない方が虫歯になりにくい」
川口先生再登場。全く同意です。でも3食+おやつは子供には必要だと思います。大人も3食+おやつくらいは生活の潤いということで、目くじら立てていません。
「スポーツドリンクが歯を溶かす」
川口先生大活躍、同意します。みんな麦茶を飲もうぜ!
「ほうれん草で噛む力がつく」
槇先生再登場、ほうれん草のおひたしを食べることは、体にもいいし、よく噛むことは良いことですはい。でも噛む力が強ければ何でも解決するものでもない。でも噛む力が強い患者さんの方が治しやすいです。矯正治療では。
お題目で全く不同意のものが2つありました。大学の教授たるもの、エビデンスに基づくという考え方がスタンダードになるつつあるのですから、せめてエビデンスに基づくお話しをしていただきたい。欲をいえば世界に通じるエビデンスを作る努力をしていただきたい。自分たちに都合のいい論文ばかりかいているのではなく世界に通じるエビデンスを目指していただきたい。
雑誌の取材にいい加減なことを答える前に。
眼科のお題目のひとつに
「暗いところで本を読んでも大丈夫」
というものが出ていた。これはブリテッシュメディカルジャーナルが引用され、暗いところで本を読むと目が悪くなる。という説には医学的な根拠がないことが示された。としている。科学者の立場としてはこれが当たり前ですよね。さらにいえば、こんなお題目のエビデンスを証明した。証明しようとした。インディアナ大学のチームは凄いですね。経済的な事とか考えるとどうかなと思う点はありますが、科学者の姿勢として真っ当であるとおもいます。
日本でもきちんとしたエビデンスのために研究費が多く使われる日が来ることを願います。
当事者の都合でなく世界に通用するエビデンスをきちんと作っていただきたい。