2008年11月アーカイブ

ブレイクスルー

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今、本を読んでいたらこんなフレーズがでてきた。


「学び」を通じて「学ぶもの」を成熟させるのは、師に教わった知的「コンテンツ」ではありません。「私には師がいる」という事実そのものなのです。私の外部に、私をはるかに超越した知的境位が存在すると信じたことによって、人は自分の知的限界を超える。「学び」とはこのブレークスルーのことです。

ブレークスルーというのは自分で設定した限界を超えるということです。「自分で設定した限界」を超えるのです。「限界」というのは多くの人が信じているように、自分の外側にあって、自分の自由や潜在的才能の発現を拒んでいるもののことではありません。そうではなくて、「限界」を作っているのは私たち自身なのです。「こんなことが私にできるはずがない」という自己評価が、私たち自身の限界をかたちづくります。(街場の教育論 内田樹)


わたしには歯科矯正臨床の師がいる。直接の師は深町博臣先生だ。彼は彼の知識と技術を惜しみなく与えてくれた。そして、彼の知識と技術をはるかに凌駕する与五沢という人間がいることを教えてくれた。私は彼と同じように与五沢先生を師とすることに決めた。(勝手にね。自分で決めた。)そして、与五沢先生の知識と技術をすべて吸収することを望んだ。未だ、すべてなど知る術もないが、患者さんを治すのに困らないだけの知識と技術は身についた。

当時、与五沢矯正研究会に属していたある先生が言った言葉が忘れられない。

「僕は与五沢先生になれない」

確かに、与五沢先生は従来の歯科矯正の枠を超えた思考により、より臨床に即した方法を提唱した。それは検査値を重視せず個々の患者さんの頭蓋顔面の形をそのまま認識し特徴を捉え、成長を予測する。という人間の能力をフルに使う方法であった。また、ワイヤーを自在に曲げ、アンカーを操った。

「僕は与五沢先生にはなれない」

どういう意味だったのだろうか。

彼は学ぶこと、自分の限界を超えることすなわち「治療の質を向上させること」を放棄してしまったのだろうか。

彼は、師をかえた。数年後また師をかえた。数年後また師をかえた。彼は彼自身が師なのかもしれない。

学校歯科保健巡回指導

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昨日は相模原市立鹿沼台小学校におじゃまさせていただきました。相模原市では歯科衛生士さんが小学校2年生と5年生に直接は歯とお口の健康についての授業を行っています。もう30年以上続いている授業だそうです。30年前は学校の校長先生や担任の先生のご協力が得られないトトもあったそうですが、努力の積み重ねで、現在ではきちんと準備して待っていただける用になったそうです。関係者のご努力には頭が下がります。今回は5年生の授業を見させていただきました。歯肉炎予防のためのブラッシング指導でした。その前に歯と歯周組織の構造について専門用語も交えて衛生士さんが児童に教えていました。歯根膜なんて言葉も出てアカデミックでしたよ。各自ブラッシングのあとうがいをしてその水をコップに戻して観察していました。「白く濁った原因はみんなの歯垢ですよ」「もう一回その水飲めますか?」と聞かれ、「きたないー」「のめないー」正しい小学生の反応でした。「でもその歯垢はさっきまでみんなのお口の中にあったんだよねー」といわれ、歯磨きの重要性を認識していた?様でした。鹿島台小学校5年1組の皆さんありがとうございました。絵は鈴木教頭先生です。似てない!

新潟大学神奈川県同窓会

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昨日は新潟大学歯学部の神奈川県同窓会に参加?(私幹事でした。)してきました。歯科医医師会館で5時半から講演会、今回は社保のお話し、県の歯科医師会の医療保険委員会委員長の鍵和田宏先生にご講演いただきました。そのあと、7時半よりいつもの「大雅飯店」で懇親会、例年より少ない22名の参加でした。それでも、つもる話で時が経つのも忘れて、話し込んでしまいました。時間が過ぎてもゆっくり歓談させていただきました。大雅飯店の皆様ありがとうございました。


来年はより良い会にしたいと思いますので、今年参加されなかった先生方の参加をお待ちしています。

虫歯、歯周病の新常識

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火曜日は資源ゴミの日、段ボール、瓶、缶、雑誌を捨てる日です。古くなった雑誌を捨てましょう。とその時、プレジデントファミリー11月号の表紙をちらっと読んでしまいました。

「子供の歯、目、皮膚にいい習慣」

見てしまった!こうなると本を開かざる終えない。朝の掃除の途中なのに・・・・


なになに「虫歯、歯周病の新常識」だと?


「ゴシゴシ磨きは意味なし」

医科歯科の川口教授が言っているらしい。そうでしょうとも。歯垢が落ちないとだめですね。同意します。


「歯磨きは1日1回でいい」

これも川口先生ですね。いい加減な歯磨きを1日3回するよりも1日1回徹底的に歯垢を取り除く習慣をつけた方がよい。それも寝る前にと書いてありました。全く同意です。常日頃患者さんに言っております。


「歯ブラシだけで落ちる歯垢は60%」

そうですね。フロスを使わないとそんなものでしょう。同意です。

「歯ブラシは毛先が開かなくても交換」

弾力性がなくなるので2カ月で交換してくださいだそうです。ちょっと?


「歯磨き後はちゃんとゆすがない」

フッ素入り歯磨きを使用しているときはその方が効果的です。同意します。


「歯科ドックでオーダーメイドのむし歯予防」

昭和大学教授の久光先生が言っている。

唾液検査をしましょうと言うことらしい。うーん難しい。唾液検査をしてカリエス予防の効果がしないより上がったと言うエビデンスは見たことがない。とおもう自信はないが。でも、患者さんのモチベーションを上げるのに良いツールではある。


「いびきは歯医者に相談できる」

昭和大学教授の井上先生が言っている。「歯科ドックはオプションも豊富だ。歯軋りやいびきの相談、歯のホワイトニングといった口腔に関する様々な悩みを相談できる」

確かに相談はできますね。でも、歯科医師がいびきを治せるんでしょうか?痩せなさいとしどうするんでしょうか?私立大学は経営も考えなくてはならないので大変ですね。


「虫歯ができてから歯科に行くのは日本だけ!?」

定期健診をしましょうということ、そうすると抜ける歯が少なくなるという報告があります。研究のデザインが良くないのでエビデンスとしては弱いですが。同意しますし定期健診は積極的に勧めます。


「軽い虫歯は自宅で治す」

初期虫歯はフッ素入りの歯磨材で毎日しっかり磨けば改善します。特にMIペーストを使わなくてもね。でも、歯医者さんに診てもらったからの方が賢明です。


「ほおづえをつくと歯並びが悪くなる」

昭和大学矯正の槇教授が言っています。「槇先生が以前診たある姉妹は姉が右、妹が左に極端にあごがずれていたそう。二人は子供部屋で机をならべていて、本を読んだり勉強するときにはお互いを邪魔しあわないようにそっぽを向いていた。つまり、姉は左手で、妹は右手で頬杖をついていたというわけだ」

ふむふむ、物語としてはおもしろいです。でもね、その姉妹は1日のうち何時間をその机に座って過ごしたのだろうか?そのうちの何時間、頬杖をついたのか?姉は右利きで妹は左利き?(だってそうでないと書きながらほおづえできないし)実際双子で反対方向に顔が曲がっている子供はいる。僕も3組くらい診た。胎児の時の向き合い方にその理由を見いだすこともできる。上記のことは仮説の一つであり、証明されたエビデンスのある説ではない。大学の教授たるものただの仮説をこのような雑誌に掲載すべきではないと思うが皆さんはどのように思うであろうか。100歩譲ってほおづえで顎が曲がるとしよう。つまり、外力で顎を変形できると言うことである。であれば、顎が曲がっている人に反対から力を加えれば治るはずである。しかし、過去の報告でその様な症例にお目にかかったことはない。北九州の先生が顎の偏位が治ったと症例呈示している野球部の少年は顎をずらして咬んでいるだけであった。もしくは咬合位でない写真が治療後の写真として示されていました。それは第十八回与五沢矯正研究会で症例をみて確認しました。よってこのお題目は不同意。


「昼間によく咬んで歯軋り予防」

再度、槇先生のご登場です。「歯軋りの一因に、しっかり噛んで食べていないと言うことがあるという。歯根を覆う歯根膜には圧力を感じるセンサーがあり、噛んだときの刺激を脳に伝える。日中によく噛まないと、夜中につじつまを合わせようと圧力を加える。つまりこれが歯軋り」

え!そうだったんですか?日中によく噛まないとつじつまを合わせようと歯軋りするんですか?そんなエビデンスができたんですね!いや不勉強を恥じますね。でも、ホント?こんなエビデンスができのなら、もっと歯科界で話題になると思うのですが・・・・

歯軋りで歯周組織がダメージを受けるのはほんとうです。ですが、歯軋りは多因子性(原因がよくわからない、もとい、原因が一つでない)なのでコントロールができない。やめさせることができないので、歯軋りで歯周組織を壊さないようにナイトガードをいれて、歯軋りのエネルギーでナイトガードを壊してもらい歯周組織を温存する。ということしかできないのが現状だと思っていました。いや、昼間噛めば歯軋りが止まる。いや、朗報ですね。ほんとなら!ホントかどうかパブメドで検索だ!いや、手っ取り早く人に聞こう。

ということでこのお題目は全く不同意。


「飲食の頻度は少ない方が虫歯になりにくい」

川口先生再登場。全く同意です。でも3食+おやつは子供には必要だと思います。大人も3食+おやつくらいは生活の潤いということで、目くじら立てていません。


「スポーツドリンクが歯を溶かす」

川口先生大活躍、同意します。みんな麦茶を飲もうぜ!


「ほうれん草で噛む力がつく」

槇先生再登場、ほうれん草のおひたしを食べることは、体にもいいし、よく噛むことは良いことですはい。でも噛む力が強ければ何でも解決するものでもない。でも噛む力が強い患者さんの方が治しやすいです。矯正治療では。


お題目で全く不同意のものが2つありました。大学の教授たるもの、エビデンスに基づくという考え方がスタンダードになるつつあるのですから、せめてエビデンスに基づくお話しをしていただきたい。欲をいえば世界に通じるエビデンスを作る努力をしていただきたい。自分たちに都合のいい論文ばかりかいているのではなく世界に通じるエビデンスを目指していただきたい。

雑誌の取材にいい加減なことを答える前に。


眼科のお題目のひとつに

「暗いところで本を読んでも大丈夫」

というものが出ていた。これはブリテッシュメディカルジャーナルが引用され、暗いところで本を読むと目が悪くなる。という説には医学的な根拠がないことが示された。としている。科学者の立場としてはこれが当たり前ですよね。さらにいえば、こんなお題目のエビデンスを証明した。証明しようとした。インディアナ大学のチームは凄いですね。経済的な事とか考えるとどうかなと思う点はありますが、科学者の姿勢として真っ当であるとおもいます。

日本でもきちんとしたエビデンスのために研究費が多く使われる日が来ることを願います。

当事者の都合でなく世界に通用するエビデンスをきちんと作っていただきたい。

イノセント・ゲリラの祝祭

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結局、忙しさというものも本人の時間のマネージメントによるのだと思う。なぜそう思うかというと、先週の金曜日に新聞の広告で「イノセント・ゲリラの祝祭」海堂尊 著が出たのを知ってお昼休みに買い求め土曜日には読み切ってしまったからである。しなければいけない仕事を後回しにして読んでしまった。そんなことをしているから気持ちと時間に余裕がなくなるのだよ。といわれそうだが、したいことがあるときは嫌な仕事もさくさく片付ける傾向にある。人間とは不思議なものだ。

面白かったです。でもね。まえに、死因不明社会(ブルーバックス)を読んでいたのでネタバレであんまり感動はなかったです。でも著者の医療に対する熱い思いがヒシヒシと伝わってきました。

「つくづく物わかりの悪い人だなあ。たとえ国家は滅びても医療は必ず残る。医療とは人々の願いであり、社会に咲いた大輪の花なんです。」

「医療という花に、欲にまみれた愚鈍な手で触るな」

イノセント・ゲリラたる。房総救命救急センター診断科病理医 彦根新吾のセリフである。

『医療という花に欲にまみれた愚鈍な手でさわるな』

これはまごう事なき著者の思いだと思う。


日本矯正歯科学会(日矯学会)で海堂尊さんは講演してらっしゃいましたが、海堂さんはそこで講演をすべきではなかったと思います。

日本矯正歯科協会(JIO)は歯科矯正領域の専門医制度をより良くするために活動しています。もしかしたら、役割的には海堂さんの描くイノセント・ゲリラの立ち位置です。

そうすると日矯は海堂さんが批判している自分を変えられないかえようとしない従来のシステムです。少なくとも私はそう認識していますし、そうでなければそもそもJIOは存在しません。そこで講演したということは、実際は従来のシステムを容認していると言うことでしょうか。本の内容と齟齬が生じます。でも、そんな人に『医療という花に欲にまみれた愚鈍な手でさわるな』なんてセリフは書けないと思いますので、なにかご事情があって講演をやりたくないのにやったのではと推察しております。


彦根新吾のセリフで心に残ったもう一つ

「思料せず、金科玉条ばかり繰り返し、新しい意見には頑なに耳を塞ぐ。すると学問は濁っていく。アカデミズム、濁ってしまえばバカデミズム。くれぐれもご注意を」


皆さんもくれぐれもご注意を。

冬が始まるよ

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車に乗っていたら、FM横浜のパーソナリティが今日は立冬ですよとお話ししていた。

そうか、もう立冬か。

どおりでさっき槇原敬之が♪ふーゆがはじまるよ♪と歌っていた。

8月のお盆明けからずーっと、仕事が立て込んでおり、なにかに追われるような気ぜわしい感じで過ごしてきたので季節感がない。10月が暖かであったからかも知れない。

とりあえず、10月末の1週間、与五沢文夫先生のエッジワイズ講習会でのインストラクターという大任を終えることができた。運営準備にも関わっていたので無事終了して一安心。受講生がきて良かったと思っていただけていたら幸である。

10月末、逗子で過ごす1日1日、朝方の気温が下がっていくのがわかった。何となく朝方は目が覚めていた。緊張していたんだと思う。

そうこうしているうちに、講習会から1週間が経過した。やばい、次の仕事に手をつけていない。早くしなくては。

1日のうちで、最も気が休まるのは、患者さんを診ている時間の様な気がする。

なぜかって?

それだけに集中していればいいから。

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