君に幸あれ

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昨日は新潟大学の歯科矯正学教室の送別会で新潟へ行ってきました.今回医局をお辞めになる先生は3名,中村先生,松原先生,鳥巣先生の3名.大学在職時に私は中村先生の指導をした事になっている.私は彼をいじめこそすれ,指導した覚えはない.送別会に先立つセミナーでみた彼の症例の仕上がりは写真で見る限り良いモノであった.いろいろと問題がないわけではないと思うが立派な矯正医になったとおもう.亡き小林元夫先生も安心してくれるだろう.私もいじめた(指導した)甲斐があったというものである.そんな縁でなにか一言送別会で話せと言われていたのであるが,なにもアイディアが浮かばず,「中村先生,中村先生,大将,大将」とつぶやきながら, 新幹線に乗っていた.すると,車窓から遠くの煙突にでかでかと書かれた「深谷ネギ」の文字が見えた.中村先生には冬になるといつも彼のおじいさんおばあさんが丹精込めて作ったネギをいただいていた.そんなことを思いだしていたらふと,松原先生と鳥巣先生の顔が出てきて3人の送別会であったことを思い出した.中村先生だけでなく3人に対してのお話しをしないといけないと思い直した.一生懸命考えたのだがお酒が進んでいたのと,場の雰囲気が長話になじまなそうだったので適当にお茶を濁してしまった.後悔したのでここに記すことにした.

テーマは自己決定

大学をやめると,色んな事を自分で決めなくてはならない.松原,鳥巣の若い二人(丹田先生は二人と同じヤンググループらしい)に一番切実なのは患者の治療方針の決定であろう.もう症例検討会はない.もっと大変なのは助講師室に森田先生はいないのである.夜中に行き詰まって,「ちょっと御相談があるんですが」とノックすることはもうできないのである.治療方針に悩んだとき,相談できる人が身近にいると精神的には楽である.だが,ほとんど成長しない.だって真剣に考えないから.鳥巣,松原両先生は成長するための決断をした.中村先生はすでに夜中に助講師室をノックすることは卒業している事と思う.かれは開業するのであるからそれこそ診断以外にも自身で決定する事が多くなると思う.大切な決定をきちんとできるようにいつも体調を整えておくことをお勧めする.体調が悪いときに無理に決定をしないこと,決定そのものを先延ばしするということも重要な選択枝であることを頭に入れておいてほしい.それとうそに騙されないこと,色んな業者が勧誘の電話をかけてくる.ホームページを作りましょう.広告はいかがですか.インタビュー記事を作成します.皆さん一生懸命に売り込んでくる.礼節を重んじて来られる方がほとんだが,なかには礼節を欠いた方もいらっしゃる.どちらの方々もほとんどの方がうそとは言わないがかなりの誇張をされる.「ホームページを作れば,ばんばん患者さん来ますよ!」「タレントの○○がインタビューに伺います.その記事を雑誌に掲載します.」ホームページを作っただけで患者さんが来る時代は終わった.インタビューを受けると料金を請求される.うそとは言わないがかなりの誇張である.私自身の業界でもかなりの誇張がある.「抜かない矯正」すべての人に抜かないでは無理.「最初にワイヤーを入れたときに痛がる患者さんが減りました.」エビデンスはあるの.ないならうそでしょ.でも,我々が生きている社会は資本主義社会である.お金を儲ける事をやめては生きてはいけない.みんな,ぎりぎりのところで営業努力をしてくる.大切なことは,うそ,誇張を見破る知識と目が必要であるということである.矯正のサプライヤーでも明らかにうそを言っている会社もある.「この装置を使うと治療期間が短くなります」「この装置を使うと非抜歯で直せます」信頼できるエビデンスはない.うそじゃん.さらにいえば悪魔のような名を持つその装置の開発者はみんなの前で一言も「早く治る」とは言わなかった.「来院回数が減る」と言っただけである.さらに,「日本人の叢生症例では抜歯を行うべきケースが多い」と言った.にもかかわらず会社は「この装置を使うと治療期間が短くなります」「この装置を使うと非抜歯で直せます」という.幸いなことに新潟大学はスタンダードエッジワイズという昔からある歴史的な装置による治療法を選択し教育している.スタンダードエッジワイズは最も根源的なエッジワイズ装置で,今あるエッジワイズ装置(矯正装置)の基礎をなすものである.歴史を紐解けば,エッジワイズ装置は1928年にAngleが作った.四角い針金を四角い溝に入れることで,歯の移動を3次元的にコントロールすることができるようになった画期的装置である.日本に入ってきたのは1960年代後半.割と歴史は古くない.その後,技術革新かどうか知らないが,プレアジャステッドブラケット(ブラケットに歯の形や歯面の傾斜の情報が組み込まれたシステム,平らなアーチワイヤーを入れるとある程度(平均値的に)歯が並ぶ)と既製ワイヤーが開発された.開発したアンドリュースは矯正治療をもっと普及させたくて術者の技量によらないシステムを作りたかったんだろうが,できあがったものは結果として矯正臨床の質の向上はもたらしていない.サプライヤーは言う「ブラケットを歯面に接着して既製のワイヤーを入れるだけで歯が並びますよ」確かに歯は並ぶ,しかし咬まない.美しくない. プレアジャステッドブラケットを使った治療でも最終的に仕上げるときには患者さん個人個人に合わせたアイディアルアーチを入れなければならない.それをしなければ平均値に押し込めるだけの「手抜き」である.最終的に個人の歯列弓の形態に合わせて形態を整えるのであれば治療途中で平均値のアーチフォームの既製ワイヤーを入れるのは回り道でしかない.スキーウエアと同じ色のエラスティックもそう.技術革新かも知れないが「手抜き」え!違う?どーして.リンガルの人たちがよく言うじゃない.「こんな時は結紮線でしっかり結びましょう」ってね.しっかり結べないんじゃんゴムだと.毎月変えないといけないしプラークの巣になるしいいことないと思うんだけど.何でみんな手抜きするんだろう.新潟大学ではスタンダードエッジワイズを基本からたたき込まれるので,少し考えるとプレアジャステッドも見方によっては手抜きだし,色んな新しい装置も実は昔からある装置の焼き直しでしかない事がわかる.本当に,それが患者さんのためになるものか,実は業者のためにしかならないものか判断がつく.それが,最初からプレアジャステッドだけで矯正を学んだ人はワイヤーが曲げられないだけでなく,歯を動かす仕組みも理解していないことが多い.ま,新潟大学にいても学ばない人は一杯いますが...今回送られる3人の先生はそんなことないので自分の業界のことであれば本物と偽物を区別できると思います.他の業界の誇大表現は追々学んでください.もっとも,3人とも夜の女性に騙されるのは大好きだからな.

こんな事を話したいと思っていた.すごい量だね.話せるわけないし.


新たな出発をお祝いいたします.

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このページは、星歯科矯正が2009年3月20日 16:39に書いたブログ記事です。

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