考える人から引用2

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村上 エルサレムの市長はあのあとで僕に握手をもとめてきて,「あれこそが小説家のスピーチだ」と言ってくれました.卵と壁が合ったら,卵を支持するのはあたりまえだという意見もあります.でも,本当にそうなのかなと思う.卵と壁があったとき,自己責任を背負って,百パーセント卵の側に立てると断言できる日本人がどれだけいるだろうと個人的には思っています.僕だって絶対という自信はありません.

卵を支持するというのは,気分的なものではダメなんです.それなりの決意と,最後まで責任をとる覚悟が必要です.僕は地下鉄サリン事件の実行犯の裁判を聞いていて,そのことを強く感じました.その人たちがやったことはまぎれもない悪であり,許されないことだ.それでもなお僕は彼らの側にたって物をしっかり考えなくてはいけないんだと.そのことで被害者の人に糾弾されたとしても,社会に糾弾されたとしても,その気持ちは変えられない.その気持ちが『1Q84』の中にもずいぶんはいっている.イスラエルのあの刃物が混じったようなぴりぴりした空気の中で考えたことは,また東京地裁の硬い椅子の上で考えたことは,僕がいま小説で考えていることにそのまま地続きでつながっています.もちろん,これでけりがついたわけではなくて,僕はこれからもずっと同じように考え続けていくことになるでしょう.


引用おわり


小説家の社会的使命とか関係なく,自分がそう思ったから実行犯の側にたって物をしっかり考えようと思ったんだと僕は思う.「卵を支持するというのは気分的なものではダメなんですそれなりの決意と最後まで責任をとる覚悟が必要です.」深いですね.でも,卵と壁,ガザでは何が卵で何が壁か分かりやすいかも知れない.でも,身の回りの事って何が卵で何が壁(システム)かわかりにくいものがたくさんある.システムの側がわざとわかりにくくしている場合もある.時にはシステムが卵の殻をかぶっている.だから,立ち止まって,よく考えることが必要なんだと思う.声の大きい人のいうことがいつも正しいわけではない.同じような情報が大量に流れているからといってその情報が信頼がおけるわけではない.とはいえ,世の中には情報が溢れている.鳩山さんが総理大臣を辞めたという判断が国民にとって妥当であったかどうかについて私は判断がつかない.それは私が政治家ではないから,政治家としての経験は皆無である.情報はたくさんあるが,判断する術を知らない.しかし,歯科や歯科矯正のことだったら判断はつく,私がすべき仕事は自らの職域において卵を支持する事だと思う.学会は専門医制度は作ったが,認定医制度はそのまま存続させるという方針である.認定医はとったが専門医も目指さず,矯正臨床を市井で行う歯科医が二千人おり,これからも増え続ける.この国の歯科矯正臨床は誰が担うのか?そのビジョンを示さずに認定医やら専門医やらを作ってもしょうがない.アメリカでは専門医の1次,2次試験には期限があり期限内に次の試験に受からないともう一度最初から試験を受け直さなくてはいけない.そのようなシステムにしているのは専門医の数をコントロールしたいからである.専門医が無制限に輩出されれば供給過剰により専門医が生活していけなくなる.そうすると治療の質が落ちる.患者さんは安心して治療を受けることができなくなる.アメリカでは矯正治療とはこのような物ですというコンセンサスが患者さんと歯科医師の間でもある程度存在する.それは歯科矯正専門医や歯科医師がそのような啓蒙活動を行って来たから.日本では歯科医師と患者のコンセンサスはもとより,歯科医師同士のコンセンサスもとれていないと思う.このような状況が放置されてきた事から,この状況から利益を得る者達がいると考える事には蓋然性がある.さて日本の専門医認定システムとアメリカのシステムを比較し最も異なることは,なにか?認定医の存在です.アメリカでは中途半端な認定は行われません.くり返しますが,期限内に専門医を取得しないとまた最初からです.日本では,1もしくは2症例の呈示で認定される認定医はその後,専門医を取得しなくともそのままです.認定医でも治療するには十分な経験と技術があるんだ,というのであれば専門医なんて制度をその上に作る必要はない.専門医こそが日本の矯正を担うべき知識と技術と経験を持った歯科医師とするならば,専門医が歯科矯正の治療を担うべきであり,それ以下の技術と経験しか持たない認定医は矯正臨床の担い手としては排除されるべき人々だと思います.私はそう思います.現状を放置することで不利益を被るのは患者さんです.利益を得るのは,患者さんの無知につけこみいい加減な治療で料金を取る歯科医師,そのような人たちに教育をしてお金を得ている人たちです.混乱を無くし歯科矯正治療のコンセンサスを患者さんに十分アナウンスして,安心して歯科矯正治療を受けられるようにしたい.そんな明るい歯科矯正を次世代に伝えていきたい.いきたいです.いけたらいいなー.いけるかなー.卵と壁はどーなった?

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このページは、星歯科矯正が2010年7月 7日 17:16に書いたブログ記事です。

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